事業報告
 平成29年度
まちづくり・人づくりを担う人材育成研修
「ファシリテーション力育成講座」
 
 期 日  平成29年6月22日(木) 9:50〜16:00
 参加者   61名
 事業内容
   
 超高齢社会の到来や人口減少といった喫緊の課題解消と一億総活躍社会の実現に向けて、地域コミュニティの持続と活性化を図ることを目的とし、地域における社会参加活動を促進する人材の育成や、研修参加者の地域における協働の取組を促進する手法としてのファシリテーション能力を育成する。

 内容の実際
【説明】「まちづくり・人づくりを担う人材育成研修について」
 説明者 福岡県立社会教育総合センター 研修・情報室 鍋田 涼子
 ファシリテーション力は、多様な価値観を持つ方々と目指すまちづくりを実現するための合意形成の手法として、各分野で今、改めて注目されています。
 本講座については、まちづくり・人づくりを担う人材育成研修の第1弾として位置付け、人材育成に関わる内容の理解促進と、スキルの向上を目指しております。この他には、コミュニケーション力育成講座、まちづくりに活かす企画力育成講座を企画しており、3本合わせて受講していただくことにより、人間関係力のスキルアップとまちづくり会議等での運営能力のスキルアップを目指しているという研修講座のつくりについて説明させていただきました。

【研修1】(講義)「組織や地域人材の協働を活性化するファシリテーションとは」
講師  特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会 フェロー
認定特定非営利活動法人日本ボランティアコーディネーター協会 理事・運営委員
国立大学法人九州大学大学院 統合新領域学府 客員准教授 加留部 貴行 氏 
  研修1では、講師の加留部先生より、ファシリテーションの必要性や概論について御講義いただきました。
 まず、これまでの時代背景や変化、「今」を生きる地域コミュニティや職場コミュニティの中で起こっていることの不安感から、対話を通じて「当事者」たちをつなげていくこと(共働)の必要性、そのための「ストーリーづくり」の重要性について、細やかに解説していただきました。そして、その「共働」の現場を育て、私たち自身も育つためにやるべきことは、@「相談相手」をお互いに持つこと、A「現場感覚」をお互いに持つこと、B「対話時間」をお互いに持つことであることを確認されました。「聴く」行為は、相手を「聴(ゆる)す」行為であり、「対話」=「聴く」×「話す」というかけ算になるということも説明されました。
 次に、ファシリテーションとはどのようなものかについてお話しいただきました。“ファシリテーションとは「引き出す力」と一般的には言われているが、語源の「ファシル」は、「○○しやすくする」という意味。ファシリテーターはその機能を担う人ということになり、支援者・促進者という意味合いから「進行役」ということができる。ファシリテーションは幅広い分野で応用できるスキルであり、多様な主体の熱い思いを「聴き出す」ことと「書き出す」ことで、「引き出す」ことにつながる”ということを、参加者(行政関係者、NPO、学校関係者)に向けわかり易く様々な事例を盛り込みながらお話しいただきました。

【研修2】(演習)「参加者を繋ぐファシリテーションの実践
                〜多様なアクティビティを通じた学びの場づくりを考える〜」
             
講師  特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会 フェロー
認定特定非営利活動法人日本ボランティアコーディネーター協会 理事・運営委員
国立大学法人九州大学大学院 統合新領域学府 客員准教授 加留部 貴行 氏 
 午後からは、ゲームを通じて考えるチームのチカラとして、ワークショップとふり返りを入れたファシリテーションの実践的演習と「意図開き」(「意図開き」…ワークショップのプログラムデザインについて目的や意図について説明すること)、質疑の時間を取っていただきました。
 まず、参加者全員でワーク@「貿易ゲーム」を体験しました。「貿易ゲーム」とは、4人一組のチームを一つの国に見立て、紙(資源)や道具(技術)を不平等に与えられ、複数のグループ(国家)の間で、できるだけ多くの富を築くことを競う、貿易のシュミレーション・ゲームです。不平等に与えられたもので○や△、□などの生産物を作り、世界銀行に売ってお金を儲けるというゲームの特徴上、参加者の皆さんは、必然的に必死になります。また、ゲームの途中で生産物のレートが変わるので、さらに拍車がかかります。
             貿易ゲーム:他国に道具を売ってくれるよう交渉    貿易ゲーム:世界銀行で生産物のチェックを受ける 
 
 ゲーム終了後、売上の確認をして、ふり返りをしました。加留部先生から「ゲームを通じて感じたことで、あなたの現場でも起こりうることは何でしょうか」という問いが与えられました。目的、時間、生産物の出来栄え等の視点から、参加者の皆様からは様々な気付きが生まれました。また、ワールドカフェ方式で、他国に行って他国での気付きが生まれる方も多数いらっしゃいました。
 
 ふり返り:ワールドカフェ方式で、気付きのシェアリング

 次に、3人一組のワークとして「SHIENワークショップ」をしました。「あなたが現場で実際に悩んでいる課題は何ですか?」という問いが出されました。@相談者がテーマの内容を説明し、聴き手は質問をし、相談者がそれに答えます。ただし、聴き手は、ここでは「アドバイス」や「意見」は言えません。Aアドバイスタイムでは、相談者は自分の想いを話し、聴き手からアドバイスを伝え、お互いがさらによくなるための話を続けます。
 最後に、使用した手法(アクティビティ)の紹介と意図開きをしていただきました。ワークショップのプログラムデザインは、そのワークを何のためにやるのか、それが何に生かされるのか、目的を見失わずに組み立てることの大切さ、目的に合わせて「管理」と「支援」のバランスを取ることの大切さ、バックキャスティングの大切さなど、ファシリテーションを行っていく際の極意ともいうべきものが満載の内容でした。
使用した手法の紹介と意図開き        
       
        参加者からの質疑 
 参加者の声
【研修1】(講義)「組織や地域人材の協働を活性化するファシリテーションとは」について
 課題についての提案をどのような内容にするのかの判断力と参加型の場づくりの重要性を学びました。
 「ファシリテーションとは」という本題に入る前の前段の話の内容が実感がありすぎることばかりで、周りとつながりを持つことが大事だと改めて思った。
 ファシリテーションの定義だけでなく事例や自治体のあり方、行政職員の姿勢等学ぶことができ、充実した内容でした。
 時代背景をわかりやすくひもといてお話しいただいた点がとてもよかった。
 「ファシリテーションとは」という概論ではなく、現代をとりまく課題を取り上げた上で、方法論や事例など学ぶことができ大変勉強になった。
 基本的な事項をもとに、具体例を出しながら分かりやすく聴くことができた。
 わかりやすい言葉で表現されていたので、理解しやすく勉強になりました。大事なことは2度言われていたので、ポイントが伝わりやすかったです。
 一番大切なのは、「聴く」ということ 対話=聴く×話す
 対話の大切さが分かりました。 引き出す力
 共働へのプロセス、“聴くということは相手を受け入れゆるすこと”人とのつながりをいかにして仕組むことが大切だと分かりました。
 聴す(ゆるす)ということ、とても理解でき、腑に落ちました。ファシリテーション力というフレーズだけがひとり歩きしないように様々な自治体で活発におこなわれたらいいなと思います。加留部先生の話は何回聞いてもいつも私の学びになっています。毎回気づきが違って、初心に戻って仕事に活かせます。
 「対話」は聴くことと話すことの“かけ算”。どちらか一方でも0なら、0になってしまう。聴いてくれない…と悩む前に、自分は許されてない、どうやったら許してもらえるか…を考えたいと思った。

【研修2】(演習)「参加者を繋ぐファシリテーションの実践 〜多様なアクティビティを通じた学びの場づくりを考える〜」について
 実際、演習を通して、起こったことを仕事に置き換えることで、より具体的にイメージしながら話せました。また、相手のアドバイスもわかりやすく、充実した時間を過ごすことが出来ました。
 貿易ゲームを通し、グループ内での役割、情報共有、話合い、周囲を見る、聴く、判断力が重要であることを学びました。
 貿易ゲーム、深かったです。作戦タイムは必要でまわりをみわたすこと、チームで作る時の大切なことを学びました。これからの仕事に活かしたいです。何かを一緒に作り上げるという行動はチームワークを高めますね。グループの人と一気に仲良くなりました。
 アクティビティを通して、何のためにファシリテーションを行うかを学ぶことができた。対話をすることで気づくこと。
 とても参考になるアクティビティでした。さっそく帰って実践したいと思います。
 それぞれの人々の得意分野等を引き出し、話題づくり又はその話題についての他の方々の気持ち(正直な)を聞きだし交流させ、コミュニティを発展させるところが勉強になりました。
 「アクティビティ」は、あくまで手段であり、何を目的に実施するのかを考えないといけないのだと改めて感じた。「ファシリテーション」=○○しやすくなるというキーワードを大切にしようと思いました。

 講座全体を通じてのあなたの満足度は(期日や日程を含めて)。
 午前中も午後もあっという間でした。今日は久しぶりにペンだこができるほど書きました(メモ取り)。加留部先生の講義は、もっと沢山の場所でもおこなってほしいです。
 ”対話”の大切さを知りました。まずは、雑談力みがきます。あっという間の研修でした。時間よかったです。
 メリハリ、テンポのある研修でした。班で協力して活動したり、じっくり話し合ったり、濃い時間でした。期日…良かった。日程…もし2日間研修があったら…。
 加留部先生の講座は切れ味するどく、色々な場でファシリテーションの力が必要とされていると改めて思います。今後、仕事、地域のコミュニティの中でこの手法を何のためにやるかを考え実践していきたいです。
 「ファシリテーション」は大切だ…とは思ってはいたのですが、あまりイメージがわきませんでしたが、今回の研修をとおして重要なポイントetc学べてよかったです。
 大変学習になりました。まとめも、一つ一つが、本日の内容と今後の実践を支えるものでした。
 コミュ力、企画力、3本立て通して参加したい。