事業報告
 平成29年度
 現代的課題対応研修
学校とともにある地域づくり・人づくり推進セミナー@
 期 日  平成29年6月26日(月)
 参加者   70名
 趣  旨
地域住民が参画し、地域全体で子ども達の成長を支え、地域を創生する地域学校協働活動や放課後支援活動を推進するため、関係者の理解促進とコーディネーター等の育成を図り、今後の取組の充実につなげる機会とする。
 内容の実際

【説 明】〈事業説明〉

      「学校とともにある地域づくり・人づくりを進めていく上で」
                   福岡県立社会教育総合センター 社会教育主事

 時代の変化にともない、これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿として、学校を核とした地域づくりの推進が求められています。そのような中、平成27年に中央教育審議会答申、平成28年に「次世代の学校・地域」創生プラン(馳プラン)が策定され、地域全体で子ども達の学びと成長を支えるとともに、地域を創生する「地域学校協働活動」を推進し、その基盤整備をしていくことが重要であるとされています。
 このプランを踏まえ、本県でも本年度から新たに「地域学校協働活動事業」を行い、「地域人材の協力を得た放課後等の充実」等を図っています。
 本研修会では、地域と学校をつなぐ先進的な取組事例等を通して、学校とともにある地域づくり・人づくりにおける関係者の理解促進と今後の取組の充実につなげる機会としていただきたいと考えています。

【研修1】〈講演〉

      「教育のブランド化による地域の魅力化」
              講師:公営塾 隠岐國学習センター
                          センター長   豊田 庄吾 氏

 豊田氏は大牟田市に生まれ、人材育成会社を経て、2009年島根県海士町に移住されました。そこで、廃校の危機に直面していた島根県立隠岐島前高校の存続のために学校を拠点とした地域の未来づくりをめざした「高校魅力化プロジェクト」に参画されています。その中では、コーディネーターを校内に配置し、三方(地域・生徒・学校)良しのビジョンを策定し、推進協議会を中心に実現をめざして取り組まれています。また、学校の役割を地域の担い手育成と再定義され、子ども達が主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら、答えのない課題にも粘り強く向かっていく力を身に付けていくために、学んだことを活用し、実践から学ぶことを大切にされました。

 また、豊田さんは隠岐國学習センターで「夢ゼミ」を実施されています。「夢ゼミ」とは、多様な生徒や大人と関わりながら、子ども達が自分自身のやりたいことを探究する学習を行う場です。これらを通して、子ども達は自分の夢や、やりたいことを見つけると同時に、地域の現状を知ったうえで、地域や社会のためにできることを見つける、まさに地域創生のための未来の担い手を育成しています。最後に、「元気な若者・子どもが出ていく地域」から「元気な若者・子どもが集まる地域」へ、つまり、童謡・唱歌「ふるさと」の歌詞にある「志を果たして帰る」から「志を果たしに還る」そんな人づくりを目指しているとお話しされました。


 【研修2】〈対談〉
 
「学校という場を核とした地域づくり」
講師: 公営塾 隠岐國学習センター
センター長 豊田 庄吾 氏
国立教育政策研究所 生涯学習政策研究部
総括研究官 志々田 まなみ 氏

 研修2では、豊田氏と志々田氏のお二人に御対談いただきました。隠岐國学習センターの交流スペースが地域づくり・人づくりにつながっていることから、交流スペースの役割やそこに集う人、またそこで学ぶ子ども達について、志々田氏からのインタビューに豊田氏が答えていただく形式で進みました。
 交流スペースがたまり場であり、あいまいな場である。この場が地域の方と子ども達が関わる場、ふれ合える場になっていること、そのあいまいな場が学びの多様性を持たせていることを具体的な様子を織り交ぜながらお話しいただきました。また、子ども達にとっていろいろな方と関わりお話を聞くことが、多様な考え方を知り、人との関わり方を学べ、さらに郷土愛につながり、地域の担い手を育てることにつながるものになるとのお話がありました。

 【研修3】〈協議〉

      「魅力ある地域づくり・人づくりを目指して」

 研修3では、異なる立場の方に4人1組となっていただきグループ協議の場を設定しました。
グループ協議の前半では、研修1の講演、研修2の対談を受けて、「魅力的な地域とはどんな地域か」について、めざす地域の姿を出し合っていただきました。その後、地域づくりは人づくりということで、「魅力的な地域をつくるためにはどのような人がいたらよいか」を話し合っていただきました。各グループでは郷土愛に満ちた地域づくりや安心安全な地域づくり等が出され、その担い手となる人や関わる人の必要性が出され、この協議を通して目指すべき地域や人の姿が見えてきました。
グループ協議の後半では、「魅力的な人を見つけ、育てるための秘訣」やそれに関わる立場(行政、学校、地域)について話し合っていただきました。どんな場の提供が必要か、どんなきっかけづくりが必要か等、たくさんのアイデアが出されました。最後に出された意見の中からベスト3を出していただきました。この協議を通して、立場の異なる方との意見交換で新たな気づきが生まれ、これからできることについて考えることができたようでした。


  【研修4】〈講義〉

      「学校と地域を結ぶコーディネート力」
              講師:国立教育政策研究所 生涯学習政策研究部
                          総括研究官   志々田 まなみ 氏

 研修4では、志々田氏より、学校と地域を結ぶコーディネート力について御講義いただきました。コーディネーターはお願い係を担っていますが、何をお願いするかがポイントとなります。地域コーディネーターとして、社会教育主事として何のために何の支援をお願いするのかを明確にすることが大切です。また、学校と地域を結ぶためには、協力し合える場や機会、チームを作り出すことが必要であり、それを担うのがコーディネーターとなります。学校とともにある地域づくりを促す協働の在り方を次の4つの段階、「情報共有の関係づくり」(第1段階)、「依頼・協力の関係づくり」(第2段階)、「地域とともにある学校づくり」(第3段階)、「学校とともにある地域づくり」(第4段階)とし、各段階に応じて求められるコーディネート力を具体的に示されました。この協働が成立するために、地域と学校がどの方向を向いて進むか、共有ビジョンを設定することが大切であること、そして、それを結ぶのがコーディネーターであることをお話しされました。
   
 参加者の声
【研修1】〈講演〉
○試行錯誤しながら知恵を出し合い、学校存続、地域づくりに注いであるパワーに元気をいただきました。たくさんのヒントもいただきました。
○郷土愛が育まれる1つのケースとして、とても参考になりました。「逆転の発想」共感しました。
○地域の中における「学校」の役割の再定義は新しい視点でした。価値観の転換が大切だと感じました。
○自分が今すごく壁にぶつかっている課題だっただけに、すごく勉強になりました。少し勇気をいただいた気がします。
【研修2】〈対談〉
○主語をWeにしていくことが大切であることがわかりました。
○学校だけでなく、場があればすばらしい考えが生まれる。あいまいさが必要であるということがまさしく社会教育の大切な部分なのではないかと思いました。
○相手の立場で考えることの重要性。「あいまい」の必要性。
○今まで課題をなくすことばかり考えていたが、その課題の見方、見える方向を変えることで、解決というより新たな方策が見えてくることに気付かされた。
○タテ割行政の壁を越えて、取組が進められていることが驚きでした。
【研修3】〈協議〉
○いろいろな立場の方や他市町村の関係者と話すことはとても良い機会でした。
○同じグループのメンバー各々の経験や現状のお話が大変役に立ち、今後の取組の見通しをもつことができました。
○制度確立の必要性を感じました。
○人づくり、まちづくりに必要なことについて話ができてよかった。
【研修4】〈講義〉
○コーディネーターはお願い係、上手くお願いするには「活動の意義」を伝えることが必要だとわかりました。
○自分の職務、立場を再認識する機会になった。
○コーディネーターの力について、明確な姿が見えたと思います。ほんの一例として紹介していただいたものからも、コーディネーターの役割の重要性がわかり勉強になりました。
○協力し合わないと生まれるものも生まれない。1+1=2以上

 研修全体を通じてのあなたの満足度はいかがですか(期日や日程を含めて)。 
○1日の中で学ぶには程良い分量と内容だった。
○これからコミュニティ・スクール推進員として、何をしていけばよいか少しわかりました。
○もっと豊田さんのお話を詳しく聞きたかったです。さまざまな立場からのお話(協議)が聞けたのでよかったです。
○よい刺激を受けました。協議がはさんであるのはよかった。
○内容も焦点化され、具体化されとても勉強になりました。