事業報告

 平成30年度  現代的課題対応研修<まちづくり・人づくりを担う人材育成研修>

まちづくりに活かす合意形成力育成講座

 
 期 日  平成30年8月21日(火) 9:45~15:30
 参加者   34名
 事業内容
 超高齢社会や人口減少といった喫緊の課題解消と一億総活躍社会の実現に向けて、地域コミュニティの持続と活性化を図るため、ファシリテーションや会議の運営等において、お互いのメリットを最大限に引き出すための合意形成力を身に付けることができるようにする。
 内容の実際

【説明】「現代的課題対応研修と本講座の位置付けについて」

説明者 福岡県立社会教育総合センター 研修・情報室 野村 美穂
 3年目を迎えるこのまちづくり・人づくりを担う人材育成研修は、現代的課題に対応するために地域人材を活用することの必要性を認識し、地域課題の解消に向けて行動する意欲を育むとともに、地域活動や主催する研修会等でのスキルの向上を目的として研修を行っています。
  ここでは、平成29年の「学びを通じた地域づくりに関する調査研究協力者会議(論点の整理)」において、住民の主体的参画による持続可能な地域づくりを行うために、地域課題解決型学習の位置づけが明確化されています。この時間では、社会教育に求められている、①地域課題解決を住民の自主的な活動につなげていくこと ②住民同士が地域コミュニティの将来像や在り方を共有することについて、説明しました。

【研修1】<講義・演習①>「関係者の意見・意志を紡ぐ合意形成とコミュニケーション」

県立広島大学大学院経営管理研究科 教授 百武 ひろ子 氏

【百武 ひろ子 先生】
【三角名札を使った自己紹介タイム】
 研修1では、講師の百武先生から、①合意形成とは何か、その必要性とあり方について理解を深める ②よりよい「合意形成」を実現するための合意形成のプロセスデザインについて実践を通して学ぶ この2点をねらいとして、講義いただきました。
 一日を通して、講義・演習をしていくうえで、大切なのは「コミュニケーション」です。
 そこで、まずは「自己紹介」を行いました。
①本日読んでもらいたい名前 ②最近妙に気になること ③話し合いでの得意技・必殺技を書いて、名札を自作して紹介し合いました。
 初めて出会う方々で、なんとなく硬い表情でしたが、これをきっかけに会話が生まれてきました。
  「合意形成」と聞くと、話し合いをまとめることと思います。そのまとめ方は、多数決であったり、妥協であったり、各々の共通点だったりします。百武先生は、それを 
(おもい)をわせてす(コンセンサス・ビルディング)とあらわしました。
  また、「説得」と「納得」の違いを示され、よい合意形成とは「納得のいく話し合い」で、かかわった人がそれぞれに十分承知し、気持ちが収まっている状態であることと教えていただきました。しかも、その納得には2つあり、合意内容に対する納得はもちろんですが、声の大きな人の意見、偏った意見に引っ張られず、多様な意見がきちんと議論されたという「合意形成のプロセスに対する納得」が大事であることを話されました。そして、信頼を築く「納得」の合意形成を実現するための5つのポイントを教えて頂き、そのために必要なことを受講者で付箋に書き出し、合意形成をしていきました。



【合意形成の場面を絵に描いています】 【5つのポイントを使って合意形成中】

 受講者の多くの方たちは、話合いにおいて、話し手が主導権を握り、大事なのは正確さ・明確さに重点を置き、聞き手に理解を求めていました。しかし、この演習をとおして、合意形成発想として、聞き手に合わせた話し方や聞き方・タイミングが大事で、結論ありきではなくもっといい方法を探っていく姿勢に変化している様子を話していただきました。

【研修2】<講義・演習②>「マルチステークホルダーと協働する合意形成のプロセスデザイン」

県立広島大学大学院経営管理研究科 教授 百武 ひろ子 氏

【多様な主体のロールプレイング】

 午後からは、ケースワークとして、グループで合意形成をしながらポスターを作成していきました。3つのテーマから1つを選び、ポスターにする前に、合意形成できていない場面をロールプレイで表現していきました。多様なステークホルダーの分析、参加者の想定、コミュニケーション方法の検討など、様々な課題を浮き彫りにする手順で、ポスター作成をしていきました。
 短い時間の中で、一つひとつ合意形成をしていきながら、合意形成に必要な事項を押さえたポスターができあがりました。







 
最後に、「なぜ、今、合意形成なのか」という内容で、リーダーに求められる能力を示していただきました。受講者が、最初、強いカリスマ性をもって引っ張っていくリーダー像だったのが、合意形成の進行役という役割を持ったリーダー像に変容していく姿がみられている様子について話していただきました。

参加者の声  
 
 【研修1】<講義・演習①>)「関係者の意見・意志を紡ぐ合意形成とコミュニケーション」
最初、合意形成とは何!?から本講習の受講を決めました。午前中は、それについて聞くことができてよかったです。でも、やっぱり難しい。
説得と納得の違い、今まで誰かに自分の意見や考えを話す時、説得するための資料つくりなど準備していたことに気づかされました。
合意形成は、内容に対する納得とプロセスに対する納得がある。内容は、コントロールできないが、プロセスはデザインできる。それが合意形成(=プロセス)
地域の総会でもなんでも、多数決で決める所に疑問をもっていたので、今日、講師の話を聞いて少数意見の大切さを教えて頂き、自分の想いは間違ってなかったと実感できました。
意見を出しやすくするために必要なポイントをまとめた後、家電チーム名を考えるという、先にまとめたポイントを活かせる流れになっているのがよかった。
   
 【研修2】<講義・演習②>)「マルチステークホルダーと協働する合意形成のプロセスデザイン」
ポスター作りという共同作業が、みんなで協力する合意形成力を養っているような気持ちになれました。
人の意見を聞く、自分の意見を言う、それを納得いくようにまとめるのは難しかったです。でも、ポスター作りはとても楽しく、自然に意見が出ました。
マルチステークホルダーという考え方は、まだなじみが薄かったが、今後は、何か事業をやる際に考えていくべきだと思った。
日頃、考えない内容だったが、会議等を進めるうえで大切なことだと思った。特に、ロールプレイングでお互いの立場で話す内容は、立場を理解する上で意味があるのが印象に残った。
最後のリーダー像の変化について「たしかに!」と思った。全員が納得する話し合い・・大切ですが、その分事務局側は準備とか心構えを十分にしないといけないと思いました。
   
 3 講座全体を通じてのあなたの満足度は(期日や日程を含めて)
グループワークのメンバーを3回変えたことはよかった。いろんな人と出会え意見を聞くことができたので。
合意形成として多様な意見の分析や形作り(方向性)の難しさもありますが、その手前、人の意見を聞き出す、その中で人の意見を尊重する場づくりに課題を考えさせられました。
地域の人に、けっこう簡単に「〇〇を決めてください」と言っていたな・・・と反省しました。