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年の瀬に思う「社会教育不易流行」


 「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。」

 この一年、様々な風景が社会教育総合センターの営みを通り過ぎました。たくさんのご意見やご教示、励ましをいただいた皆様に、深い感謝の念を抱きながら一年を無事に終えようとしています。
 しかし、今年もまた、近年の例にもれず、社会教育行政を進める者にとっては、組織改廃、緊縮財政など多難な旅路となりました。ふと足を止めて見わたすと、おおもと「社会教育のかたち」自体がおぼろげに映るようでなりません。改めて「社会教育の不易流行」に思いを巡らせています。
 考えてみますと、社会教育は学校教育にある「学習指導要領」という大綱を持ちません。むろんそのことには、優れた先達の意向が反映されていることはいうまでもありませんが。しかしやはり、各地域で行われている社会教育に、様々な「違い」をもたらすことは事実です。とりわけ、社会教育事業を網羅した国の一大補助事業が10年ほど前に終息したことは、多くの自治体が受託し、あるいは施策や事業の骨格としてきただけに、あたかも「社会教育の不易の喪失」を招いた観があります。たしかに、その後も家庭教育・子育て支援など個別の取組では着実に成果を上げてきています。地域社会では、NPOをはじめとして(社会教育活動と意識されているかを問わず)新しい多くの挑戦が広がっています。しかし、それらをつなぐ全体像がなかなか見えてこないように感じるのです。


 このような中、私たちに求められていることは、個々の事業を組み上げていく際に拠り所となる「ものさし」を見つけることではないかと考えています。そしてその「ものさし」は、地域社会を丁寧に見つめるまなざしの中から生み出されてくるようでなりません。芭蕉の言う「不易流行」が根本は一つものであるのならば、さしずめ「社会教育の不易流行」は地域の営みにこそ存在し、その課題を「診断」し「処方」する営為そのものではないか、と考えている次第です。
 いずれにいたしましても、今後とも社会教育の同行者として皆様と旅を続けて参りたいと存じております。引き続きのご指導とご鞭撻を心よりお願い申し上げ、年の終わりのあいさつといたします。ありがとうございました。

 平成22年12月  副所長 黒田 修三