期 日 平成29年10月31日(火) |
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参加者 68名 |
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趣 旨 |
地域住民が参画し、地域全体で子ども達の成長を支え、地域を創生する地域学校協働活動や放課後支援活動を推進するため、関係者の理解促進とコーディネーター等の育成を図り、今後の取組の充実につなげる機会とする。 |
内容の実際 |
【説 明】〈事業説明〉 |
「学校とともにある地域づくり・人づくりを進めていく上で」
福岡県立社会教育総合センター 社会教育主事
これからの学校と地域が目指すべき姿として、学校を核として子どもに関わりながら地域づくりをしていくことが求められています。そのような中、「中央教育審議会答申」(H27)において、今後の地域における学校との協働体制の在り方が示され、この答申の内容を推進していくため、具体的な施策と工程表をまとめた「次世代の学校・地域」創生プラン(H28)が策定されました。
さらに、それを踏まえ、本年3月、「社会教育法」が一部改正され、「次期学習指導要領」が策定されています。このことから、地域全体で子どもたちの学びと成長を支えるとともに、学校、家庭、地域といった立場の異なる人々が協働する仕組みづくりが求められています。
本県でも本年度から「地域学校協働活動事業」を行い、地域人材の協力を得た放課後等の充実等を図っています。
本研修会では、学校とともにある地域づくりを目指し、行政や公民館、地域が学校と関わりながら何ができるか、さらに学校という場を核とした地域づくりについて関係者の理解促進と今後の取組の充実につなげる機会としていただきたいと考えています。
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【研修1】〈実践発表〉 |
「子ども中心の地域づくり」〜みんなが主役のまちづくり〜
篠栗町教育委員会社会教育課 課長 岡部 禎 氏
篠栗町は社会教育主導による学社連携事業「校区別地域づくり」が進められて10年になります。町内には3つの小学校校区があり、校区ごとに「校区づくり協議会」が発足し、校長1人を除く9人の社会教育委員が3校区に分かれて実行委員会に入っています。各校区ではそれぞれに地域に沿った部会をつくり、活動を通して子どもの育成を中心に据えた校区づくりを行っています。事務局である社会教育課は、「事務手続きや会議出席等活動実施に対するサポートはするが、口をださない」を原則として関わっています。これらの取組から、校区づくりでは「『住み続けたいまちづくり』への夢や願いを持っている人たちが顕在化された。」「学校支援団体や他の地域の方との相互協力が充実し、横断的なネットワーク(輪)ができた。」という成果が得られました。行政として地域づくりを進める中で「ひと・もの・ことを絡めることを大切にする」「地域が活動しやすいようにコーディネートする」「想いや願い・課題を中期的な展望で取り組む内容と、今すぐ取り組める内容を判断し、進めていく」等を大切にしているとお話しされました。
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「地域の絆をつなぐ公民館の取組」〜学校と連携・協働した魅力ある地域づくり〜
福岡市高取公民館 館長 萩尾 憲子 氏
福岡市でも有数の大きな校区である高取校区は、31歳〜59歳までの割合が45.1%で最も多く、転勤族が50%を占めている地域です。そのような中、高取校区には1小学校、1中学校があり、年間を通じて公民館が学校と地域をつなぐ様々な関わりをしています。
小学校では、1〜6年生の授業(昔遊びや環境学習等)や体験活動(高取舞伝承やお釜のご飯炊き等)で指導者として、老人クラブや高取校区自治協議会等の地域の方に関わっていただいています。この高取舞は、平成10年に地域興しの一環で作成され、当時の公民館長、小学校校長、自治会長が協働して創ったもので、地域の絆の舞とも言えます。また、公民館行事や地域行事において小学生が参加者としてだけでなく、運営に関われるような役割を作っています。
また、中学校との交流では、地域の清掃活動や小学生の宿題見守り事業等に中学生の参加を呼びかけ、年間7つの行事を開催しています。これらの成果としては、小中学生へ校区の歴史や文化が伝承され、さらに地域行事への参加増加につながっています。
小学校・中学校との交流のきっかけは、地域と学校をつなぐキーパーソンの存在です。高取校区では、公民館職員がそのひとりとも言えます。今後も公民館では、小・中学校・地域をつなぐ役割や小中学生の居場所作り、さらに地域の中の顔の見える関係作り、安心安全な校区作りを目指しています。
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「ともにつくる子育ての風」〜ドリカムプランの実践をめぐって〜
川崎町立川崎小学校 校長 益田 茂 氏
「子育ての風が吹いていない地域社会では、学校は無力。(子どもは風の中で育つ!子育ての風が必要!)」この考えのもと、川崎小学校では学校改革に取り組んでいます。学校改革を実践することで、「学校教職員がチームとして一体となり、『つながり』を深めるプログラム(子育ての風おこし)を積極的に導入していけば、学校・家庭・地域の社会力は必ず向上し、学校を変革することができるはずである」という仮説のもと、以下の5つの取組を行っています。@地域・家庭と学校をつなぐ取組(地域とのつながり)〜コミュニティ・スクールの導入、A家庭学習を支援する取組(家庭・地域とのつながり)〜1・2年生を対象にした「学びっこ」教室開設、B「見取り」を支援する取組(関係機関とのつながり)〜発達障がい等の専門的な知識と経験を有する方の招聘、C体育・スポーツ活動の取組(児童のつながり)〜川崎町スポコン広場大会の開催、D読書活動の取組(家庭とのつながり)〜学校司書配置と「家読(うちどく)」の取組。これらの成果として、児童の学習・生活面でかなり向上し、地域や家庭においては、学校への理解・協働の深まりが見られるようになりました。また、学校教職員もチーム川小として職員一丸となって取り組むようになりました。川崎小ドリカムプランを通して、小学校だけでなく、中学校までの9カ年間を経て自己実現をめざす力を育てる(夢を叶える)ことを目指しています。
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【研修2】〈シンポジウム〉 |
「「地域と学校の連携・協働のプロセスと成果をめぐって」 |
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登壇者: |
篠栗町教育委員会社会教育課 |
課長 |
岡部 禎 氏 |
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福岡市高取公民館 |
館長 |
萩尾 憲子 氏 |
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川崎町立川崎小学校 |
校長 |
益田 茂 氏 |
コーディネーター: |
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九州大学大学院人間環境学研究院教育学部門・社会教育学 |
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准教授 |
岡 幸江 氏 |
研修2では、研修1の実践発表者3氏を登壇者、コーディネーターとして岡氏をお迎えしてシンポジウムを行いました。
まず、実践発表者3氏の方に、参加者から出された各実践に対する質問にお答えいただきました。
その後、岡氏より3氏へ2つの共通質問が出されました。
@「地域と学校の連携・協働のプロセスはどのようにできていくのか。どのように目標を立て、どのように共有していったのか。」
・行政の立場から:区長会とのつながりが大切である。また、学校長の理解が大きい。さらに、校長が代わっても地域がしっかりと目標を持ち、それを学校に伝えていくことが大切であり、それが地域の役割である。等
・公民館の立場から:小学校とは同窓会を通じてつながっている。地域行事は、地域や地域の子ども、家庭、そして、学校とつながれる場である。等
・学校の立場から:窓口を1本化し、チーム、組織として動いている。校長として、担任としての役割分担が必要である。等
A「システムをどのようにつくるのか。」
・行政の立場からは:学校に出向き、地域の様子を伝えながらつなげていく。学校教育課、子ども育成課とのつながり、協働する。等
・公民館の立場からは:小・中学校のPTAが終わると自治協議会に入っていただき、地域に関わっていただく。人材育成のシステムづくりを行った。等
・学校の立場からは:地域に学校を知ってもらう場、情報発信の場をもつ。川崎小では、中間報告会を設け、学校の取組を地域に伝えている。等
3氏に共通していたことは、地域と学校が連携・協働するためには、キーマンがいなくても継続した取組にすることである。そのためにはシステムづくりが必要である。これらが「地域づくり」「人づくり」につながっていくということでした。
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【研修3】〈協議〉 |
「学校とともにある地域づくりを目指して」
研修3では、異なる立場の方に4人1組となっていただきグループ協議の場を設定しました。
グループ協議の前半では、研修1の実践発表、研修2のシンポジウムを受けて、「各立場で地域と学校をつなぐためにできること、できそうなこと」について、自分の立場を振り返り、さらなる可能性を探っていただきました。その後、グループで交流いただき、行政、公民館、コーディネーター、学校等それぞれの立場で何ができるかを考え、お互いに何を求めているのかを知っていただきました。
グループ協議の後半では、「地域と学校の連携・協働を継続させるために必要なこと」について考え、交流していただきました。交流の中で、「リーダーとなる人材を育成するだけではなく、そのリーダーが学びを活かせる活躍の場を設ける」や「地域課題を共有し、役割分担を『見える化する』というように地域にあったシステムづくりをする」等、具体的な仕組みや取組が出し合われました。この協議を通して、立場の異なる方との意見交換で新たな気づきが生まれ、これから何をすべきかについて考えることができたようでした。
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【研修4】〈講義〉 |
「学校とともにある地域づくり」
講師:九州大学大学院人間環境学研究院教育学部門・社会教育学
准教授 岡 幸江 氏
研修4では、岡氏から「学校とともにある地域づくり」を行うための学校と共有していくプロセスについて御講義いただきました。
まず、組織からはじめるか、人からはじめるかは、地域の実態に応じて異なるが、どちらにおいても校区の核をつくることが大切になります。核を作る上では、まず、「既存の組織・取組を活かすこと」から考えていく必要があります。また、目指すべき目標や方向性としては、多様で個別化した人々と魅力的で普遍的な夢を共有することです。社会教育である以上、単なるイメージではなく、実態と実感に基づく目標を立てることが大切です。なお、実際に活動を進めるうえでは、子どものためにしているはずが、いつのまにか大人のためになっていないか、つまり、主人公である子どもたちが置いてきぼりになっていないかを見極める必要があります。地域づくりにおいては、手段と目的が転倒しないよう気を付けていただきたいところです。
さらに、「小さな声」を「地域と学校」における学習を構成し連携を進める出発点として、今、子どもたちがおかれた状況に、教師や地域がどれだけ寄り添うことができるか。そして、それを言葉に表現し、共有できるかが大切になります。1つの声から背後に広がる問題そのものに近づき、そこから「システム」をつくり、常にリニューアルしていくことが今後のプロセスづくりに求められます。
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参加者の声 |
【研修1】<実践発表>
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● 実践発表は3人の方がやってこられたこれまでのことをわかりやすく発表くださったのでよかった。現場を変えることの努力は大変ですが、やりがいもありますね。参考になりました。 |
● どの発表も熱く語っていただきました。同じテーマでの各方面からの発表で聞いていてとても楽しかったですし、知らないことが多々ありました。 |
● 各発表のキーワードとして、「キーパーソンの存在」「システム化」「熱意・行動力のある指導者」があげられると思います。大変勉強になりました。 |
● 子育ての風が吹いていない地域社会では学校は無力だということがとても印象深かったです。行政や公民館の現状はなんとなく実体験としてわかるが、学校の現状はなかなか知る機会がなかったので参考になりました。 |
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【研修2】<シンポジウム>
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● システムづくりの重要性を感じました。1人の力、学校だけの力では難しいことも、地域、行政と協力できるシステムをつくっていく必要があると思いました。 |
● 目標立てからプロセス、そして現状を詳しく話していただいて、とても参考になりました。何をするにも最初は苦戦して、そこを工夫しながら臨機応変に対処することが大事と思います。 |
● 具体的にやるべきこととして「情報を正しく伝える」「PTA役員の受け皿を地域につくる」ことがわかりました。 |
● 発表をもとに付け加える形になってよかったと思います。リーダーの存在は大きい!!やはり、どこの分野でも人材育成なのかなと感じました。 |
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【研修3】<協議>
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● 公民館、コーディネーター、学校の立場からの様々な意見が身近に感じることができた。 |
● 自らの考えを整理したり点検できる良い機会になりました。立場が異なる方から他の知見を得て発想が広がった。 |
● それぞれの立場が違い、話すことができました。人材育成等かかえる問題等、参考になりました。 |
● 行政区によって、抱えている課題が違うので、アプローチの仕方が異なりますが、このままではいけないという思いが伝わりました。 |
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【研修4】<講義>
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● 子どもたちが主人公であることを基本、スタートとして目標設定→組織・人づくりをしていくことが大切だと思いました。 |
● 今日の学びのポイントを示してくれました。行政はどうしても狭い視野になりがちだということに改めて気づきました。もっと広く物事を捉えられるようになりたいです。 |
● 学校と地域の連携は何のためなのか?子どものためであるということを忘れてはいけないと思いました。 |
● 「実態と実感に基づく目標の設定」という考え方に同感しました。 |
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