【研修1】
〈事業発表@〉「前原小学校区の『人・もの・こと』を語れる子どもの育成」
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糸島市立前原小学校 |
教頭 |
堺 |
康成 氏 |
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教諭 |
吉冨 |
弘晋 氏 |
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糸島市立前原小学校では、「@校区の地域の温かさから、地域から学校への協力は多いが、学校から地域へのアプローチにかける。A校区に愛着と誇りを持ってほしい。B地域を教材化している「総合的な学習の時間」が十分に機能していない。」を学校の実態としてとらえ、研究主題を「前原小校区の『人・もの・こと』を語れる子どもを育てる生活科・白雲タイム 〜自ら問いをもち続ける体験活動を通して〜」とし、校区を愛し、校区を誇りに思う子どもの育成に取り組まれています。1,2学年では校区を探検し、校区を知る学習を行い、3学年では商店街を調べ、4学年では糸島に多く存在する絶滅危惧種でもある「ハマボウ」について学び、5学年は職場体験、6学年では前原の歴史を学ぶなど、地域の方と協働した生活科・総合的な学習の時間を展開しています。6学年はこれらの学習に加えて、商店街の利用者が減少している等の現在の課題を知ったお店の方の思いにも触れたりすることで、自分たちに何ができるのかを考え、子どもたちが商店街のPR活動を行っていました。
また教師自身が地域を知り、愛着をもつために、全職員が学校運営協議会のメンバーと一緒に、地域のフィールドワークを行ったり、地域学習の計画を共有し、学習をふり返ったりする報告会も年間数回開催し、授業だけでなく学校と地域が子どもたちや地域について交流する場が設定されていました。
報告会の中で地域の方は「学校から地域への働きかけがあることは大変すばらしい。地域ばかり、学校からばかりでなく、双方向からの働きかけを大切に、校区を盛り上げていきたい」「地域学習では、子どもたちは一生懸命頑張っていた。地域の人との出会いを大切にして、このような取組が1、2年で終わることなく、10年、20年と続く取組であってほしい」と話されていたそうです。
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〈事例発表A〉
「学校との連携・協働した公民館事業」 |
福岡市東箱崎公民館 館長 花田 健司 氏
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昭和62年に箱崎校区から分離成立した当時から現在も子育て世代が多く、九州大学の留学生をはじめ、多くの外国籍の方が居住する地域であり、他民族・多文化との共生をテーマに開館当初から多種多様な事業を展開し、公民館を中心とした地域づくりが進められてきました。
それらの事業の中で、今年で4年目を迎える、韓国の中学校と地域の中学校との交換ホームステイ交流事業を中心に御発表いただきました。夏に韓国の中学生数名を受入れ、冬には地域の中学生が韓国へホームステイします。公民館事業ですが、引率は地域の中学校長が行います。生徒たちは、韓国でも日本でも、授業への参加や全校での歓迎会を行いました。教育委員会からホームステイ交流を行うのであれば、日韓の中学校を姉妹校として行う案も提案されましたが、「他民族・多文化との共生を目指した地域づくりを進めるには公民館の事業として行いたい」という花田館長の熱い思いに学校も共感し、「ぜひ協力させてほしい」と申し出て現在の事業へとつながっていきました。
現在もホームステイ事業だけでなく、多くの公民館事業に中学生がスタッフなどで参加しています。また学校関係者が公民館を通じて自治協議会や地域住民等、多くの人とつながることができる場ともなっています。
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〈事例発表B〉
「ふるさとに学び、夢や志を抱き、ふるさと九重を大切にする人づくり」 |
大分県九重町教育委員会教育振興課 参事 小幡 英二 氏
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平成25年度、町内4校あった中学校が1校に統合されました。同時に、小、中学校教員や保護者、地域住民などで「どのような子どもに育てるか」「子どもたちのために何をしているか。また何ができるか」「子どもを中心にすえ、地域で『ここのえ学園』を構想しよう」について熟議し、そこで出た意見をもとに、こども園・小、中学校・社会教育を中心に保護者・地域住民・各種団体が連携したコミュニティの創造を目指した「ここのえ学園」構想をスタートしました。ここのえ学園計画を具体的に実施していくための組織として、「ここのえ学園運営委員会」を組織し、【@こども園と小学校の連携、A小学校と小学校の連携(1ヵ所に集まっての集合授業)、B小学校と中学校の連携、C学校と保護者・社会教育・地域の連携、D教育内容の見直し】を計画、実施しました。また、ふるさと九重を愛する子どもの育成を目指した地域学習「ここのえ学」を小中学校のカリキュラムに位置づけ、地域の産業について学んだり、地域の観光名所を調べた後「キッズガイド」として実際に訪れた観光客へ説明したりする学習を展開しています。さらに「ここのえ学園構想」を地域に浸透させるために、学校と地域をつなぐ場として公民館を拠点とし、コーディネーター役として公民館主事を活躍させることなど話されました。
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【研修2】〈シンポジウム〉
「学校と地域の連携・協働のあり方」 |
登壇者 |
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大分県九重町教育委員会教育振興課 |
参事 |
小幡 英二 氏 |
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福岡市東箱崎公民館 |
館長 |
花田 健司 氏 |
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糸島市立前原小学校 |
教頭 |
堺 康成 氏 |
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教諭 |
吉冨 弘晋 氏 |
コーディネーター |
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岡山大学大学院教育学研究科 |
教授 |
熊谷 愼之輔 氏 |
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研修2では、午前中の登壇者に加え、岡山大学大学院教育学研究科教授の熊谷愼之輔氏をコーディネーターとして迎え、シンポジウムを行いました。
まず熊谷氏から「地域と学校が協働へ向けた組織や関係をつくる上で、どのような工夫や苦労があったのか」と発表者に投げかけると、「学校運営協議会を充実させる」「公民館も連携した地域と学校が協働できる組織を行政がコーディネートして作る」「公民館も積極的に学校へ考えや思いを伝えていく」など話されていました。
次に熊谷氏が「現在の取組の質を向上させるための展望」を投げかけると、「中学校で設置している学校運営協議会を小学校にも設置し、町全体で地域と学校が協働して子どもを育てる取組を充実させたい」「子どもが校区の人・もの・ことについて表現できるよう、今後も地域とともに育てていきたい」「次回の地域防災訓練では中学生が役割をもって参加する予定。これからも多くの学校や地域の行事において公民館と学校が協力して地域づくりをしていきたい」など話されました。
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【研修3】〈講 義〉
「地域学校協働活動が目指しているものとは」
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岡山大学大学院教育学研究科 教授 熊谷 愼之輔 氏 |
研修3では、熊谷氏から「地域学校協働活動が目指しているものとは」というテーマで講義していただきました。
はじめに、地域と学校の連携・協働へ向けたファーストステップは「組織づくり」であり、地域・学校・家庭の連携は「漢方薬」であり、すぐに効果が出るとは限らず、だからこそ連携を進める取組を意図的・積極的・継続的に行うことが重要であり、そのための推進母体となる組織(チーム)が必要だと話されました。さらに、学校は保護者・地域の多様な思いや教育観の違いを取込むことで、学校や地域が単独ではなしえなかった地域学校協働活動が可能になるとも話されました。
次に連携・協働のセカンドステップとして、活動の「質」を高めることの重要性について話されました。答申では学校側に「地域とともにある学校づくり」への転換を求めるだけでなく、地域に対しても、学校を核とした協働の取組とおして、地域の将来を担う人材を育成し、自立した地域社会の基盤の構築を図る「学校を核とした地域づくり」の推進を促しており、「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」が改革の両輪であることを話されました。さらに、両輪をつなぐ軸になるものが、「社会に開かれた教育課程」であり地域と学校が共有されたビジョンのもと、連携推進母体をエンジンとして取組を進めていく必要があると話されました。
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