事業の報告 平成27年度
  3.環境ボランティア研修in英彦山Ⅱ
ねらい
 自然豊かな英彦山を舞台に、間伐材利用や河川の水質調査活動等を通して、森林環境や河川環境に関する理解を深めるとともに、環境保全のためのボランティア活動に主体的に参加しようとする人材の育成を図る。
期 日  平成27年8月22日(土)~23日(日)

参加者 50名(高校生12名、教員3名、一般1名、ボランティア団体34名)

プログラム
1日目
【8月22日(土)】

 時  間 内 容 及 び 活 動 内 容 
12:50 開講式(嘉麻市・夢サイトかほ)
13:00  活動「水質調査体験、水生生物調査体験」(嘉麻市・嘉穂水辺の楽校)
14:20 遠賀川源流公園へ移動
15:00 活動「遠賀川源流探検、水質調査、水生生物調査」
(嘉麻市・遠賀川源流公園)
16:20 英彦山青年の家へ移動
17:20 入所オリエンテーション
18:00  夕食・入浴 
19:30  実践発表「環境保全活動の実際」 
20:00  意見交流「環境ボランティアでできること」 
21:30  就寝準備・就寝 

2日目
【8月23日(日)】

       
 時  間 内 容 及 び 活 動 内 容 
 6:30 起床
 7:30  朝食
10:00 諸連絡、オリエンテーション
10:20 活動「自然観察会」(英彦山青年の家周辺)
12:00 昼食
13:00 活動「シダ抜き作業及び幼樹マーキング」(英彦山青年の家周辺の森林)
14:30  まとめ 
15:00  閉講式 
        
活動の実際

 1日目 【8月22日(土)】
活動【水質調査体験、水生生物調査体験】
  嘉麻市にある嘉穂水辺の楽校(大隈橋下)の遠賀川で、水質調査と水生生物調査を体験していただきました。パックテストによる水質検査の方法について、遠賀川源流サケの会会長青木宣人先生から説明をしていただき、水の汚れを測定しました。パックテストは、使用するときにチューブの栓を抜き、水を吸い込ませ測定します。検査パックに汚れが付かないように注意して調査を行いました。また、水生生物調査は、福岡県保健環境研究所の中島淳先生に調査に適した場所、必要な道具、生き物の取り方を説明していただき、川の中に入り生き物を探しました。採取後、淡水魚と水生昆虫に別けて名前を調べ、記録を取り、淡水魚を用いて川の環境の豊かさを、また、水生昆虫で水質の良否を判定していきました。参加者は、調査を通じて身近な自然に接し、水環境問題への関心を高めていきました。

↑水質調査について説明される青木先生 ↑水生生物調査について説明される中島先生
 ↑川の水を測定する参加者  ↑川の水を測定する参加者
 ↑採取した川の生き物  ↑採取した生き物の名前を調べる参加者

 参加者の声
パックテストの測定方法を知ることができました。川の水の汚れが簡単に解ることに驚きまし
た。
中流のオイカワなど様々な生物を目の当たりにし、水生生物を知るのに大変参考になりました。
水の中にいる生き物の種類で川の環境が解るのがすごいと思いました。川の水質を保つため出来ることを行いたいです。 

活動【遠賀川源流探検、水質調査、水生生物調査】
 遠賀川源流公園に移動し、馬見山の山中を約300mほど入り、遠賀川源流点を見学しました。見学後、源流点や源流公園内の水質調査、水生生物調査を行いました。参加者は、ヒルの仲間やサワガニなどを採取し、中流との水生生物の違いを理解していました。
↑遠賀川の水は、ここから響灘へと注がれます ↑採集した生き物

参加者の声
遠賀川の源流点を見ることができ、水を大切にしていきたいと思いました。
岩の下に色々な生き物が生息しているのに驚きました。
たくさんの生物を見ることができてよかったです。 


実践発表【環境保全活動の実際】
 夜の活動は、環境保全活動を行っているボランティア団体の取り組みについて発表していただきました。遠賀川流域住民の会理事長の松岡朝生先生に竹林間伐や竹炭による河川の浄化、川の清掃活動などに取り組んでいる団体について紹介していただきました。また、日本野鳥の会の田代省二先生に子どもたちが自然に興味を持ち、環境を考えるきっかけにと行っている祓川での「生きもの探検隊」の活動について説明していただきました。参加者は、様々な団体の取り組みについて知ることができ、環境保全活動で何ができるかを考えるきっかけとなりました。
↑遠賀川の活動について説明を行う松岡先生  ↑祓川の活動について説明を行う田代先生

参加者の声
色々な映像を使っての紹介であり、活動内容の丁寧な説明を聞く事ができ、よく理解できました。
森づくりを行ったり、生物の保全や歴史・文化の保全などをするのは大変そうだと思いました。
色々な団体の色々な活動を知ることができました。とても環境に良いことをしていると思いました。 

意見交流会【環境ボランティアでできること】
 実践発表の後には、意見交流会を行いました。「ワールドカフェ」形式を採り入れ「環境ボランティアでできること」について話し合っていただきました。リラックスした雰囲気の中で、環境ボランティアでできることや魅力・特徴などの意見が出されていました。参加者は話し合いの中で、現在の活動に対する答えがすぐに返ってこないこと、長期的な視野を持って活動しなければいけないこと、知識や技術を次の世代へ継承する必要があることなどを理解していました。交流を深めることで、視野が広がり、ボランティア自身の成長につながりました。
↑リラックスした雰囲気での話し合い ↑話し合いで出された意見を書いて頂きました

参加者の声
身の回りで自分達に出来ることを探して実践していこうと思いました。目標ができたのでよかった。
ごみを減らしてもっと森や川をきれいにしていくべきだと思いました。
他の学校のボランティア部では地域に密着した活動を行われており、とても良いなと思いまし
た。参考にしたいと思いました。


2日目【8月23日(日)】 
活動【自然観察会】 
  2日目は、福岡県嘉穂・鞍手保健福祉環境事務所で行われている「生きものにぎわいの森づくりin英彦山」との協同事業として実施しました。県内6か所の保健福祉環境事務所では、生物多様性に関する普及・啓発や活動団体の育成・支援などの取り組みを推進しています。社会教育施設との連携による生物多様性の普及啓発として行いました。福岡県保健環境研究所の須田隆一先生と石間妙子先生が英彦山青年の家周辺の林野を散策しながらシカの食害や天然及び人工林の見分け方、生育する植物の種類や特徴を丁寧に説明されました。参加者は、福岡県では英彦山地一箇所のみ自生の「レンゲツツジ」や英彦山で見られるカエデの仲間「コハウチワカエデ」「イロハモミジ」「ウリハダカエデ」「カジカエデ」などを観察し、植物の名前や葉の違いなどの特徴を理解していきました。また、自然とふれあうことで、生物多様性という言葉を感覚的に理解していきました。
 
↑自然観察を行う参加者 ↑左が人工林、右が天然林

参加者の声
シカがたくさんの木の皮を剥いでいて、こういうのが森に影響していると思いました。
普通に暮らしていては解らないことを知ることができました。草の名前を覚えることができた。
今回森林に入って自然にふれることができました。森林に興味を持つことができました。


活動【シダ抜き作業及び幼樹マーキング】
 午後からはシカ防護ネットで囲ったモデル地域で林床植生の健全な回復を図るため、10m×10mの枠内に繁茂したシダ類(イワヒメワラビ)を取り除きました。その後、枠内を更に5m×5mごとに区画し、幼樹(樹木の芽生え)に目印を付け計数して行きました。参加者は、シダ類を手作業で引き抜いた後、樹木と草の違いに気をつけながら「ムラサキシキブ」「ニワトコ」「イロハモミジ」「アブラチャン」などの幼樹を見つけていきました。植生のバランスを調整する作業を通して、森林保全への関心と理解が深まりました。 

     ↑シダ抜き作業を行う参加者 ↑幼樹マーキング

参加者の声
シダを抜いたあとはきれいになってやりがいがありました。
シダを抜いて幼樹マーキングをするのは大変だったけど、これが森にとって大事なことだと思いました。
これからも続けていきたい。森林の保全が大切だということを改めて考えることができました。
 
全体をとおして

 第2回目の環境ボランティア研修in英彦山は、1日目に遠賀川流域を舞台に水環境学習としての「水質調査」や「水生生物調査」、遠賀川や祓川で水環境保全に取り組まれている方々の「実践発表」等を行いました。また、2日目は、第1回に引き続き英彦山青年の家周辺の林野を舞台とした「自然観察会」や「シダ抜き作業・幼樹マーキング」などを行いました。参加者からは「参加して環境について勉強になりました。頑張ってもっと環境を良くした方が良いと思いました。」「環境問題には少し関心はありました。今日の研修でもっと関心が持てました。」「初めての発見がたくさんありました。これからもボランティアの活動をしていきたいと思うことができました。また森林探索で様々な動植物について知りたいです。」という声が聞かれ、水環境保全や森林環境保全への関心と意欲を高められていました。今後、地域での環境保全活動に役立てていただきたいです。
環境ボランティア研修in英彦山は、第3回目を11月29日に実施します。多くの方々の参加をお待ちしています。