事業の報告 平成28年度
  3.環境ボランティア研修in英彦山Ⅲ
ねらい
 自然豊かな英彦山を舞台に、講話や実習等をとおして、森林環境や河川環境に関する理解を深めるとともに、環境保全のためのボランティア活動に主体的に参加しようとする人材の育成を図る。
期 日  平成28年9月24日(土)~25日(日)

参加者 57名(高校生23名、教員2名、一般2名、ボランティア団体30名)

プログラム
【9月24日(土)】
 時  間 活 動 内 容 
13:00~13:10 開講式(第1研修室)
13:15~14:50 活動「森林整備体験」(英彦山青年の家敷地内の杉林)
15:00~16:00 実践発表「環境ボランティア団体の取組」(第1研修室)
16:00~17:00 講話「これからの環境について」(第1研修室)
19:00~21:00 意見交流「環境ボランティアにできること」(講堂)

【9月25日(日)】

 時  間 活 動 内 容 
10:00~10:10 諸連絡、オリエンテーション
10:20~11:40 活動「自然観察会」(英彦山青年の家周辺)
11:50~12:40 昼食(ススキヶ原周辺)
13:00~14:00 活動「レンゲツツジの保全作業」(ススキヶ原周辺)
14:20~15:00 活動「ものづくり体験・ドングリ工作」(オリエンテーション室)
15:15~15:30 閉講式(第1研修室) 

活動の実際
活動【森林整備体験】
 参加者に森林保全の実践的活動を体験していただくために、遠賀川源流サケの会会長青木宣人先生の御指導の下、英彦山青年の家敷地内の杉林に入り、スギの皮むき間伐作業を行いました。 皮むき間伐とは、木の下部の表皮を剥くことによって、土の中からの水分や養分が木全体に行き渡らないようにして、枝や幹を次第に枯れさせる間伐の方法です。まず、青木先生から、 皮むき間伐の方法と作業上の注意点について説明を受けました。その後、グループごとに作業を始めました。
 参加者は、のこぎりや竹べらを使って表皮を一枚一枚剥いでいきましたが、初めはなかなか上手く剥くことができませんでした。しかし、作業が進むにつれて徐々に慣れていき、 皮をきれいに剥くことができるようになりました。参加者は、この体験を通して、誰でも簡単にできる森林保全活動の方法を理解し、実行することの大切さを体感しました。

 
↑皮むき間伐について説明される青木先生 ↑グループで協力して皮むきを行う参加者

参加者の感想
木の皮を1本1本剥いでいくのは、すごく大変だと思いました。でも、誰でもできる間伐の方法を知ることができてよかったです。
やっぱり自然は、私たちの生きる源だと思いました。
森林保全は、すごく大切なことがわかりました。
実際に、自分の体全体で自然を感じることができた。空気がとてもおいしかった。 

実践発表【環境ボランティア団体の取組】
 参加者に、現在の環境問題に対する意識・環境保全活動への意欲を高めていただくために、遠賀川流域住民の会事務局長の松岡朝生先生から環境保全活動を行っているボランティア団体の 取組について発表していただきました。松岡先生は、参加者に遠賀川における環境保全の必要性について理解してもらうために、生活排水や工場排水による河川環境の悪化した歴史について 説明されました。また、実際に取り組んでいる活動として、竹林間伐、竹炭による河川の浄化や川の清掃活動等について紹介していただきました。参加者にとって、河川環境を保全する ボランティア活動の内容について知ることができ、環境保全活動に参加しようとする意欲を高めるきっかけとなりました。
   
↑遠賀川の活動について説明を行う松岡先生 ↑講師に質問をする参加者

参加者の感想
環境ボランティアをしてくれる人がいるから、私たちはきれいな所で暮らせているんだと思いました。
人材が足りなかったことで、森の活性化が減少しているようなので、もっとボランティアに参加して努力していきたいです。
環境ボランティア活動を何年もしている人々がいるとは思いませんでした。今度、川の保全活動に参加したいです。 

講話【これからの環境について】
 森林整備作業に引き続き、「これからの環境について」と題して、青木先生から講話をしていただきました。内容は、間伐を行い森林を手入れすることで、森林内の土壌の保水力が増え、 表土の浸食や流出による土砂崩れを防いだり、木陰にある木に日光を当てることで、十分に光合成ができるようになったりするということでした。また青木先生は、生育に適した場所で 植物を植えるべきであるという「適地適木(てきちてきぼく)」についても説明していただきました。参加者は、森林整備の大切について学び、今後環境ボランティアとして活動する意欲を 高めていきました。
   
↑間伐について説明される青木先生 ↑講話を熱心に聞く参加者

参加者の感想
間伐の仕方など、自分の知らないことをたくさん知ることができ、自分たちが何をすべきなのかが分かりました。
先生の話を聞いて、さらに森林整備の大切さがわかりました。自分たちも、意識して取組むことが大切だと思いました。
これからの環境についての重要性について理解することができ、今後も環境ボランティアに積極的に参加しようと思いました。

意見交換会【環境ボランティアでできること】
 1日目の最後の活動として、意見交流会を行いました。意見交流会は、参加者がお互いにリラックスした雰囲気の中で意見を出し合うことができるように、 「ワールドカフェ」形式で行いました。参加者は、「環境ボランティアでできること」をテーマに意見交流をしました。そこでは、「環境に対しての意識を持ちながら生活すること」、 「今自分ができることとは何か」、「ボランティア活動を通して学んだ知識を他者に教える必要があること」などの意見が出ました。参加者同士で交流を深めることで、 環境についての視野が広がり、環境保全のためのボランティア活動に参加しようという気持ちをお互いに高め合いました。
   
↑リラックスした雰囲気で話し合う参加者 ↑話し合いで出された意見を発表する参加者

参加者の感想
ごみ拾い等、自分が今何ができるかなどについて考えることができました。
もっと日本の自然のために役に立ちたいと思いました。
ボランティアに参加するだけではなく、学んだことを他の人に教えることも必要だと思いました。
皆さんと意見を交わして、もっと積極的に参加して環境を守りたいと思いました。
環境保全のためのボランティア活動に協力して参加しようと思いました。

活動【生きものにぎわいの森づくり①・自然観察会】
 2日目は、福岡県嘉穂・鞍手保健福祉環境事務所が主催する「2016生きものにぎわいの森づくりin英彦山」との協同事業として活動しました。県内6か所の保健福祉環境事務所では、 生物多様性に関する普及・啓発や活動団体の育成・支援などの取組を推進しています。今回の活動では、社会教育施設との連携による生物多様性の普及啓発を目的としました。
 午前の活動は、参加者に英彦山の生態系について学んでいただくために、英彦山青年の家周辺の自然観察会を行いました。講師の福岡県保健環境研究所の須田隆一先生と石間妙子先生から、 シカの食害、天然及び人工林の見分け方、生育する植物の種類や特徴について説明していただきました。参加者は、英彦山で見られるコハウチワカエデ、イロハモミジ、ウリハダカエデ、 カジカエデなどの様々な種類のカエデを観察し、植物の名前や葉の違いなどの特徴を理解しました。参加者の中には、植物の様子を写真撮影する方もいました。また、シカが木の皮を食べた跡や 独特の匂いがしてシカが嫌うマツカゼソウなどを観察し、シカの食害の実態についても学びました。
   
↑講師の説明のもと自然観察を行う参加者 ↑カエデの葉の写真撮影をする参加者

参加者の感想
写真を使って説明してもらい、たくさんのカエデの種類について理解できました。
シカが生息していることやそれに対してのいろいろな対策をしていることがわかりました。
シカ、ウサギなど野生の動物が本当にいるということに驚きました。
シカが嫌いな匂いがする植物は食べないことなどを知ることができてよかったです。
知らなかった草の名前を知ることができてよかったです。

活動【生きものにぎわいの森づくり②・レンゲツツジ保全作業】
 午後からは、ススキヶ原の上にあるレンゲツツジ保全エリアで、レンゲツツジの植生を守るために、ウサギ防除ネットの追加設置とススキの刈払いを行いました。 ウサギ防除ネットの追加設置では、保全エリア内にウサギが入り込まないように、すでに設置しているシカ防護ネットの下部にスカートネットを取り付け、ロープや杭で固定する作業をしました。 また、ススキの刈払いでは、水分や養分がレンゲツツジに行き渡るように、保全エリア周辺のススキを鎌を使って刈り取っていきました。参加者は、レンゲツツジを保全するための活動を通して、 森林保全への関心と理解が深まりました。
   
↑ウサギ防除ネットを設置する参加者 ↑ススキの刈払いを行う参加者

参加者の感想
たくさんススキを刈り、汗を流すまで頑張りました。英彦山の森が早く復活するといいなと思います。
希少植物を守る活動をすることで、絶滅を防げることが分かりました。このような活動に参加して、もう少し自然に関わっていかなくてはいけないと思いました。
レンゲツツジの花が咲いている様子を見てみたいです。
ウサギのためのネットの取付けがあることを知り、シカだけではないんだとの認識が大きくなりました。

活動【ものづくり体験・ドングリ工作】
 レンゲツツジの保全作業の後、再び青年の家に戻りドングリやまつぼっくりなどの自然の中の植物に親しみを持っていただくために、ものづくり体験を行いました。 参加者がいろいろな作品を考えて作ることができるように、嘉穂・鞍手保健環境福祉事務所の方にドングリやまつぼっくりだけではなく、スギの枝を輪切りにしたものや森林に落ちていた 木の枝などを準備していただきました。 参加者は、選んだ材料を使って思い思いの作品を作り、自然の材料に親しむ楽しさを感じていました。
   
↑材料を選びながら楽しく工作をする参加者 ↑ホットボンドを使って製作する参加者

参加者の感想
ドングリ工作では、いろいろな飾りなどを作ることができて楽しかったです。
自然の中にあるドングリやまつぼっくりなどを使って作ることによって、自然に対して身近になる気がしました。
普段なかなか木の実を使って工作をすることがないので、いい経験になりました。

全体をとおして
 「環境ボランティア研修in英彦山Ⅲ」は、森林保全の実践的活動を体験し、環境ボランティア活動への参加意欲を高めるきっかけ作りを目的として行いました。 参加者からは、「自然と触れ合うことによって、今の環境問題を知ることができ、私たちが意識して改善していくべきことなどを詳しく理解することができました。」 「森林整備体験や自然観察会を通して、自分にできることはどういうことであるかを知ることができ、これからの生活で、今回学んだことを周りの人などにも発信していこうと思います。」 「この研修に参加するまでは、正直自分には関係ないと思っていましたが、この研修を通して、一人ひとりの意識で、どんな細かいことでも積み重ねれば大きな力になるということを学ぶことが できました。」「環境のことをもっとしっかり考え、また、考えるだけではなく行動しないといけないことが分かりました。」という感想があり、森林保全に対する関心やボランティア活動に 対する意欲を高めることができました。
 年間3回シリーズで行った本事業では、近年の森林や河川における環境問題の解決に向けて、環境保全のためのボランティア活動に主体的に参加しようとする人材の育成を図るために、 森林散策、森林整備、水質調査等の自然体験活動を行いながら環境について学んでいただきました。
 環境ボランティアを育成するためには、事業への参加を促し、学んだ知識や技術をそれぞれの地域で生かしてもらうことが大切です。このことを踏まえて、今後とも環境保全のための ボランティア活動に主体的に参加しようとする人材を一人でも多く育成する企画をしていきたいと考えています。